2015年9月21日月曜日

辞職願

誠心誠意、心の底から、仕事を辞めたいと思っている。

何度かこのブログにも書いたが、つくづく仕事がうまくいかない。当初から、自分にサラリーマンなど務まるのかという疑念はあったが、その疑念は半年という醸成期間をへて確信に変わった。無理だ。

けれど、そう思い始めてすでに一ヶ月以上が経過している。もっと言えば、上司に辞意を伝えようと決心してからも二週間以上が過ぎ去っている。さて、その二週間とはどんなものだったか。

昼、出勤時間が近くなるといやいやワイシャツに袖を通す。一度も洗ったことのないウォッシャブルのズボンをはく。ホームセンターにて千円で買った腕時計を装着。いざドアを開けて仕事場へ。そして、待ち受ける上司と顔を合わせていつものあいさつ。「お疲れ様です」。さあ、ここで言え。ここで言うんだ。私は自分で自分を鼓舞する。それこそ思春期の少年が片想いの少女へ愛を告白するかのような胸の高鳴り、緊張が走る。が、結果はいつも同じだ。何も言えず、その日の業務がはじまる。

いやいや、チャンスはまだだ。まだ終わっちゃいない。仕事終わり、私の中のもうひとりの私がささやく。ここで言え。上司が帰る前に言え。ふたたび高まる緊張。口の中が乾く。平和堂で買ったボトルタイプのコーヒーでのどを潤す。再度奮起。だが、結果はまたしても同じ。「お疲れ様でした」。その日の業務が終わり、私は夜の道をヘッドライトに照らされて帰る。

家に帰り着くといつも思う。このままじゃだめだ。こんなことを繰り返していたら一生仕事を辞められない。下手すりゃ定年退職しちまうぜ。よくてもリストラの対象だ。いやいや、おれは契約社員だから「次年度の契約はありません」てオチかな。とにかく、無気力なまま会社員生活がつづくばかりだ。

そんな内省を繰り返した結果、昨夜、とうとう妙案を閃いた。問題は、口頭にて伝えられなかったことなのだ。だったら書面で、文章で伝えればいいじゃないか。そもそもおれは口下手の文弁慶だろ? な、だったらメール送ればいいんだよ。

なるほど。もうひとりの私に説得された私はだれもいなくなった仕事場でひとりメールソフトを立ち上げ、「辞職願」なる件名のメールを書いた。「もう無理っす」で済む内容を、そこそこ社会人的な文章に仕立て上げ、宛先欄に上司のアドレスを入力して「送信」。このボタンを押すには数分間の躊躇があり、内なる世間から「そんなかんたんに仕事を辞めていいのか」「親御さんががっかりするぞ」「三年は辛抱しろ」等々のお叱りを頂いたが、それも強引にねじ伏せてクリック。私はいつもより軽い足取りで夜道を帰った。

辞職の意志表示というものをメールで送るのが社会人としていいのかどうか、マナーに適っているのかどうかは知らない。あくまで口頭で、あるいは相談というかたちで話をしておくべきだったかもしれない。けれど、ここに至っては致し方ないと思っている。なんせ、このままでは辞めたいと言うに言えぬまま、正社員になり、出世し、部長になり、定年退職して悠々自適に老後生活に突入してしまうおそれすらあるのだ。

あのメールを出して帰宅し、今日は日曜、明日も祝日。もう、このままとんずらしたいものだ。

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