昔、実際の400字詰めの原稿用紙に作品を書いて投稿していた頃は何の問題もなかったのでしょうが、もうだいぶ前から執筆はワープロやエディタとなっています。となると、このデータを原稿用紙の枚数に「換算」するとき、厄介な問題が出てくる。一言で「換算」といっても、いくつかのやり方が思いつくのです。
具体的には、以下の三つで迷うでしょう。
1:ワードなどで字数カウントし、これを400で割る。
2:原稿をいったん20字×20行の設定にして、そのページ数を数える。
3:募集規定が30字×40行の場合、これを原稿用紙3枚分と考える。
まず、一つ目のやり方はアウト。これだとスペースや空白がすべて無視されてしまいますからね。そういったものも含めて作品であり原稿なので、このやり方は論外。問題は二つ目と三つ目。
どちらかというと、2の方が妥当な気がします。「原稿用紙に換算」というのを字義通り取れば、このカウントの仕方がベストのはずです。ただ実際、ワープロ原稿での応募となると、30字×40行とかの指定が多い。ならば、この指定に従った場合の原稿一枚を原稿用紙3枚と数える方がわかりやすい気もする。なので、このやり方を推奨する方もおります。
はゆま荘
そもそも、新人賞は大体募集過多の状態で、それを裁く選考側の人員は下読みも含め常に不足気味だ。そして募集媒体はこのIT時代でも紙ベースのところがほとんど。一次選考や 二次選考の段階で、いちいちそれを電子スキャンするだろうか? また、さらにそれをわざわざ面倒な[20字×20行に直すやり方]……の手順を使って、原稿用紙換算するだ ろうか? そんな暇はないはずだ。
下読みの仕事はまず原稿を落としふるいにかけること。内容については、どうしても主観的な好き嫌いが入るが、枚数制限ならいやおうなしの客観的な基準だ。引っかかっているものがあれば、これ幸いと落とすだろう。そして、数少ない客観的な基準については、出来るだけ単純に、すぐ判断できるものにするはずだ。
原稿用紙を受け取り、最終ページ番号を見る。40×40で、105ページ。あら~、5ページ、原稿用紙換算で20枚オーバーしてるね。はい残念でした~
実にもっともな意見です。しかも、この方はすでにデビューされているプロなので信憑性があります。3の方法が正しいのか……?
ところが、です。だとすると大きな問題が出てくる。「手書きでも印刷でも、どっちでも受け付けるよ」という新人賞の場合、どちらで応募するかによって、実質的な原稿の下限・上限に違いが出て来てしまうのです。
どういうことか。
同じ分量の作品でも、実はやってみると、3でカウントした方が「枚数」が多くなるのです。たとえば、私の手許にある自分の原稿でやってみた場合、20字×20行のレイアウトにすると306枚ですが、30字×40行の1ページを原稿用紙3枚分と考えると、329枚となってしまいます。この差は大きい。もし、「前者なら規定内だけど後者だとオーバー」なんてことになれば由々しき問題です。まったく同じ作品なのに、原稿用紙に書くかワープロ原稿にするかで応募の可否がわかれるというのは不合理でしょう。
ということで、やはり2の方法、20字×20行に設定してカウントするが妥当だと思います。いちばん素直なやり方ですしね。これまでもそうしてきたし、それで一次二次の選考も通ってるし、きっと大丈夫さ!
(追記)
もうちょっとややこしいことも考えたので、これは追記にしときます。
ちょっと電撃小説大賞の募集要項を見てみましょう。この賞はめずらしく、実際の原稿用紙の場合の規定枚数と印刷の場合の規定枚数を併記してくれているのです。見てみると、こうなっております。
ワープロ原稿の場合80-130枚(42字×34行)
原稿用紙の場合250-370枚
つまり、アスキー・メディアワークスさんとしては、42字×34行のワープロ原稿130枚を、原稿用紙370枚と同等だと考えているということです。
さて、ここで42字×34行の原稿130枚を、上の3のやり方で「換算」するとどうなるか。42字×34行だと、一枚が1428字となり、400で割ると3.57枚となる。これが130枚あると、「原稿用紙換算」で464枚となってしまう! これは不合理です。原稿用紙の場合の370枚とかけ離れ過ぎている。やはり、3のやり方はおかしいみたいです。
結局のところ、「400字詰めの原稿用紙だとすると何枚になるか」というふうに素朴に受け取り、20字×20行に設定してページ数を確認するのがベストでしょう。
迷っていたので助かりました。的確な考察、ありがとうございます。
返信削除コメントありがとうございます。ややこしい文章になってないか不安でしたが、お役に立ててうれしいです。
返信削除出版業界はいまだに昔の習慣である「原稿用紙換算」を使い続けているので、初めて接する人はよくわからないですよね。最近はもっとわかりやすい表記をする出版社も出始めていますが。