こう疑問に思われた方はいないでしょうか。
「音楽やアニメ、映画の違法アップロードはたくさんあるのに、小説の違法アップロードを見かけないのはなぜだろうか」
ネットの海を浮遊しておりますと、YouTubeをはじめとした動画サイトには違法なコピーが溢れかえっております。アニメはむかしの名作から放映直後のものまでいくらでもありますし、映画もかなりの数が視聴可能です。音楽にいたってはもう販売元が自らアップしたりしている。
それに対して、小説はかなり状況が異なります。著作権切れの作品を公開している青空文庫、素人が書いたものを集めている小説家になろう、あるいはエブリスタといったものはあるけど、市販の作品を違法にコピーしたものというのは見たことがありません。私もネット歴は14年になりますが、そのようなものは寡聞にして知らないのです。おそらく、ほとんど存在しないのでしょう。
では、それはなぜなのか。
一つの答えとしては、小説のコピーとアップロードが意外とめんどうだということ。デジタル情報としては圧倒的に小さいはずの小説ですが、文字をすべてキーボードで打ち直すのはかなりの手間ですし、全300ページもある単行本はコピーするだけでも大仕事。それに対し、音楽や映像作品はデータ量は多いものの直にコピーできてしまうから違法アップロードもされやすい。これも理由のひとつではあるかもしれません。
ですが、もう一つ、「コンテンツを享受するコストの問題」というのもあると思うのです。
先日書いた「濃さ」の問題ともつながってきますが、ある作品を楽しむためには受け手からのコミットメントが欠かせません。どんなものにせよ、ある程度は享受する側が歩みよる必要があります。たとえばそのための時間を作ったり、観ながら読みながら考えたり、他の知識を動員したりなどなど。そして、そのコミットメントの度合いはメディア、あるいはジャンルによって異なります。テレビはぼーっと見てても楽しめる一方、小説はそれなりの集中力・思考力・想像力が必要になります。つまり、コミットメントというコストが必要になるのです。
コストというと真っ先に思い浮かぶのは金銭的な費用ではあります。映画なら1800円のチケットを買い、小説ならやはり1000円前後の書籍を買う必要がある。けど、これらはコストの一面でしかありません。実際には、それらを楽しむためのコミットメントもコストなのです。そして、小説の場合は後者のコストの方が高い。
小説は、文庫ならわずか500円ちょっとで買えます。ですが、読むのにはたいてい2時間か3時間はかかる。しかも、集中力もある程度必要になる。とすれば、金銭的なコストなどたかが知れているでしょう。小説は、お金以外のコストが高いメディアなのです。
とすると、これが、小説の違法アップロードがない理由ではないでしょうか。たとえネットからただでデータをDLできたとしても、それで軽減できるのは金銭的なコストだけです。時間の節約になるわけでも、労力の節約になるわけでもない。そんなものを、わざわざ良心の呵責を覚えてまで入手しようという気持ちが、私たちには湧いてこない。そういう事情があるのだと思います。
普通にたくさんアップロードされていますよ。
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