無職になるまであと九日。休日を除けば、出勤日はあと七日である。いよいよカウントダウントといったところ。
仕事を失えば、もちろん給料は入ってこない。出勤せずとも給料を振り込んでくれればありがたいのだが、そんな幸運は望めない。これまでは毎月二十五日に莫大な富が転がり込んで来たものの、それがゼロになってしまう。
給料がなければ物が買えない。食べ物も生活必需品も買えない。お金を払わずとも物をくれればありがたいのだが、そんな好都合なことは期待できない。したがって、生きていけないことになる。無慈悲な論理である。
そんな事情により、もうすぐ実家に帰ることになるのだが、しかし本日、職場からの帰り道でひとつ、別の選択肢を思いついた。暗い夜空のもと、自転車をこぎながら、頭の上にピカッとあることが閃いた。そのときの閃光はかなりのもので、暗闇に満たされていた周囲の畑、民家、シャッターの下りたクリニック、歩道橋などが一瞬真昼のごとく照らされたほどであった。さてそんな超新星のごときアイデアとは何か。それは、タイトルでネタバレしているが、だれか女性に養ってもらうというものである。
私は知っている。世の中には、孤独に過ごしている女性がたくさんいることを。学校を出、会社に就職し、とりあえず働いてはいるものの、忙しいし寂しいし、心にぽっかり穴の空いた女性がいることを知っている。そのココロのすき間、お埋めしましょう。
「なにを都合のいいこと言ってるの。あんたを養って何になるっていうのよ!」
まあ落ち着いて。振り上げたバッグをおろして、あたたかいココアでも飲みながら、まずは話を聞いて欲しい。
まず、私は掃除が得意だ。整理整頓には自信がある。学生時代、私の部屋を訪れた友人・知人の八割は、私の居室を見て「ホテルのようだ」「モデルルームのようだ」と嘆息していたほどなのだ。忙しくて片付け、掃除、ゴミ捨てがろくにできないというあなたのために、私はいつでも、部屋をきれいにしておくことができる。
第二に、毎日手作りの料理を用意してあげられる。もうすでに十年近く一人暮らしの経験があり、そのうちの大部分、私は食事を自炊でやってきた。ある程度のレパートリーはあるし、経験がない料理にも臆せずチャレンジすることができる。私の開発した餅チーズのお好み焼きは絶品だし、ハンバーグの焼き加減はびっくりドンキーもびっくりの一品である。外食、コンビニ弁当が多いあなたの食生活は、私の存在により一変するだろう。
さらには、いつでも愚痴を聞いてあげることができる。いやな上司にお説教された、同僚のミスを自分のせいにされた、こなし切れない量の仕事を押し付けられた、さまざまな理不尽・不条理に疲れ傷ついたあなたの心の嘆きをいつでも受け止めよう。そして決して批判せず、説教なんてもちろんせず、やさしく肩を抱いて慰めてあげよう。
これだけのメリットがありながら、おそらく、私ひとりを養うコストと言えば、月に三、四万の生活費増といったところ。小食だからさして食費はかからない。ギャンブルもやらない。たばこは吸っているが、ご希望とあればいつでも辞める。
ご応募、お待ちしております。
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