貴様の言い分は、つまりこういうことか。ブラック企業は若い人間を使い潰す、精神的にも肉体的にも疲弊させる、それは社会の害悪だと。だからなくすべきだと。そう言いたいのだな。
たしかにブラック企業での労働は過酷だ。毎日あさから夜まで休みなく働き、残業代は出ず、休日にまで出勤を強要され、上司は理不尽にふるまう。おまけに正社員であるにもかかわらず、将来の見通しは暗い。実際のところ、安定した生活とはほど遠い。しかし、ブラック企業は本当に悪しきものなのだろうか。社会からなくすべきなのだろうか。
考えてもみろ。ブラックと言われている企業のサービスのことを。どのどれを取っても、顧客にとって非常にいいサービスをしてはいないかね? ブラック企業の提供するモノ・サービスは安くて良質なものばかりだ。一定のクオリティを保ちつつ、驚きの安さを実現している。大手の居酒屋やコンビニチェーンが頭に浮かんできただろう。それらの企業は、われわれに安くていいものを提供してくれているのだ。喜びと笑顔を与えてくれているのだよ。
さらには、従業員にとってすら、実はブラック企業は望ましいものなのではないか。もちろん、表面上はきついだのしんどいだの嘆くものもいるだろう。なかには鬱病となってリタイアするものもいるだろう。しかしブラック企業はその従業員にやりがいと目標を与えてくれているのだよ。
ある者にとって人生は、ブラック企業なしにはただただ退屈なものだったかもしれない。もし、どこにも属さず、ひとりで生き方を決めねばならないとしたら、人生の膨大な時間をまえにして立ちすくむしかなかったかもしれない。しかしブラック企業は、そんな人間を構成員として包摂し、目標と生きる張り合いを与えてくれるのだ。がむしゃらに働けば立派な社会人だと認めてもらえる、そんな環境を与えてくれているのだ。搾取だと? ハハ、冗談ではない! むしろブラック企業は万人を受け入れ、日々することを与え、おまけに給料まで払っているのだ。これは破格の待遇ではないかね?
もしブラック企業がなくなったらどうなる? われわれは安くて良質なサービスのうち、多くを失うかもしれない。雇用される側から見れば、居場所と目標を失ってしまうかもしれない。それが社会にとってよいことなのだろうか。
さあ、これでも貴様はブラック企業をなくせと言うのか。どうだ? ……そう、それでよい。ブラック企業こそは、われわれの社会にとってなくてはならぬ存在なのだよ。ブラック企業の社員たちは特有の倫理にのっとって必死に働く。そこでやりがいを感じる。客は笑顔になり、笑顔がかれらの喜びになる。これほど幸せなことはあるまい。
ブラック企業が、永遠に栄えんことを!
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