2016年4月29日金曜日

塾講師の仕事内容:授業と準備と質問対応

塾講師はどのくらい授業を受け持っているのか。ざっくり言うと、社員の場合はだいたい一日二コマから三コマ程度である。小学生のクラスを一コマ、中学生のクラスを二コマというのが標準的だった。

授業は決められた時間で行うので、延長によって時間が延びるということはない。しかし問題はその準備である。これに時間がかかる。三年目以降の慣れた人になればいいが、最初の一、二年は毎回毎回ゼロから板書案を用意したり授業展開を考えておかねばならないためたいへんである。

一時間の授業につき一時間から二時間の準備をするとなれば、実質的な労働時間は増える。しかし、それはすべて自宅でやっておかなければならない。そして、その時間に対しては給料が出ない。塾講師が他の仕事に比べて「割に合わない」と感じるとすればこの点だろう。

塾は、最初の記事にも書いたとおり、始業が午後一時過ぎである。だから、午前中の時間は自由に使えると思う。会社のあるパーティーで少し話をした先輩は、午前中が自由だから、そこで博士論文を書こうと思っていたと語っていた。が、その目論みは挫折したようである。かくいう私も、午前中に小説を書こうと思っていたが、就職してすぐ、それは無理だと悟った。少なくとも最初の一、二年は自宅での授業準備によってプライベートな時間の多くが削られてしまうからだ。

では、大学教員のように、ペーペーのうちに授業ノートさえ完成させてしまえば、あとあとそれを使い回しできるかと言うとそうでもない。毎年担当になる学年・教科が同じとは限らないし、当然、クラスによって進度も変わってくる。目の前の生徒に合わせて授業をするのが学習塾のメリットなのだから、それを無視して機械的に進めることはできないのだ。

というわけで、授業そのものにかかる時間は少なくても、準備にかなり手間取る。

内容的なことについても少し書くと、塾講師というのは、生徒に「聞かせる」のが大事である。そのためにさまざまなテクニックを習得しなくてはならない。基本、塾の生徒というのは話を聞かない。レベルの低いクラスほどそうである。大学の講義のようなものを想像していると痛い目を見る。見た。


さて、集団授業ばかりでなく、個別に質問に来る生徒への対応も大事な仕事のひとつ。とりわけ高校受験を控えた三年生などは毎日のように質問に来る。

たとえばチラシを折っていても、テストの採点をしていても、質問に来たら答える。時間を取られるので忙しいときは厄介だが、基本的には、生徒と近い距離で接する時間なので楽しいことが多いし、貴重な機会である。このときの質問によって、授業をどれくらい理解しているかとか、そういう感覚を得ることもできる。

私の校舎の場合は、いつでも質問していいことになっており、生徒が事務室に質問を持ってきたら必ず答えることになっていた。だが、これだとやはり業務に支障が出る場合もあるため、校舎によっては質問時間を決めたり、予約制にしていたりもしたようだ。どういうやり方がいいかは校舎によって違うだろう。

今振り返ってみると、塾講師をしていていちばん楽しかったのはこの質問対応であった。集団を相手にするのは苦手だ。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。